指揮の要訣!考え方の教育

僕は30歳になった時ぐらいに、部内選抜の試験を合格し陸上自衛隊幹部候補生として、
福岡県久留米市に所在する、幹部候補生学校に在学していました。

幹部候補生学校では、1~4つの候補生隊に分かれていて、その中でも
第1候補生隊に所属していました。

さらに、1つの候補生隊の中でも4つの区隊に分かれて、僕は第1区隊の第1班という、
まさしく頭号区隊に所属していました。

そんな頭号区隊での斥侯教育を受けた時の思い出なのですが、

下図の通り、ABC道をC方向の敵に向かい前進中の中隊において、
前方に派遣された幹部斥侯の動作
その日の教育課目でした。

で、実はその前に課題課目として、
貴官は、C方向に向かう中隊の斥侯長として、任務を全うせよ!
また、それに至る計画を作成せよ!
との事前課題が付与されていました。

僕は、野外令という幹部自衛官必須のマニュアル本の斥侯箇所を読み込んで自分なりに計画を作成しました。

幹部候補生学校で大切な事は、付与された課題に対して、マニュアル本(教範)をしっかりと読み込んで、それを行動できるまでイメージすることが大切です。

ここで、過去の経験とかではなく、先人の英知野外令というマニュアル本の通りやれるかが大切なのです。全ては基本基礎をしっかり頭に叩き込まなければなりません。

その為には、まずは頭で考え抜いて、じ後、間違ってもいいから実践することが大切です。

指揮の要訣!考え方の教育実践

区隊長
「斥侯長は、いかにして任務を達成するのか?答えられる奴はいるか?」

という区隊長の問いかけに、数人が挙手をして積極果敢に問答をしていました。
多くは、「前進配置」とか「隠蔽地通過」のような事を答えていました。

※自衛隊の教育では積極性を重んじる為、このように、区隊長の質問には多くのものが挙手をして、積極的に自分の意見を自由に答えていた形式が多かったのです。

区隊長としては、みんなの意見には納得がいかない面持ちで、徐々に顔が険しくなるのが目に見えてわかりました。

「そんな安易な考えで、任務が達成できると思うのか?」などと喝を入れてきました。
そんな中、挙手をしている僕に、区隊長が当ててきてきました。


「中隊の先頭がBに達するまでに、じ後、中隊が甲道で前進すべきか?それとも乙道で前進すべきか?を決するに必要な資料を提供します。」

区隊長
「よろしい!もっと具体的に言え。」


「斥侯をまず、Bに急進させます。その後、H時(中隊先頭の到着時刻を算出)までに、甲乙両道の状況をできるだけ確かめ、中隊長に報告いたします。」

区隊長
「急進の速度及びその理由は?」


「B点まで約20分で到着するように速度を上げます。理由はB点で中隊先頭の到着までに10分間、偵察及び索敵に10分の時間を要するためです。」

区隊長
「10分間で、偵察と索敵ができるのか?」


「はい。この場合やらなければなりません。」

その様なやり取りの後、区隊長は僕を斥侯長に命じました。

次いで、斥侯長として事前に付与課題で作成した計画を区隊長に提出し、幾度かダメ出しと修正を繰り返しながら、承認を得ました。

早速、斥侯班の班員(教育の場合は全員学生同士で実施します。)を集めて、
任務付与、戦闘予行等を実施し班員の認識の統一を図りました。

この時、指揮の要訣に従って明確な企図(目的と我が隊の任務)と具体的命令の付与をした後、中隊長役の学生に、斥侯準備完了の報告をして訓練が開始となりました。

訓練終了後の講評で、区隊長は、捜索の任務を有する斥侯は、その上官の立場を判断して、
いかなる時期までに、いかなる事項を報告すべきかを考える事が根本であることを強く示してくれました。

実際の場合には斥侯を派遣する指揮官は、できるだけこの一点を明らかにし、かつそれに必要な時間を考えてやらねばならないと懇示せられ、その考え方が身に沁みました。

じ後、幹部候補生学校を卒業し、幹部自衛官として勤務してきた中で、当時の区隊長から教育を受けた、大所高所から斥侯長の考え方を教育せられた事に対して敬服に堪えない限りです。

後に、僕が指揮官として勤務し、再度野外令を読み直すとともに、実際の陣地進入の際の、偵察行動において、
「指揮官は、斥侯派遣において、捜索事項及び報告時期を明示するとともに、任務達成に必要な時間の余裕を与える事は一番の考慮事項」と区隊長の訓練での教えそのままだと敬服しつつも、自衛隊の教育が、最初に考え方を徹底的に教育するとともに、実地訓練で体で覚え込ますやり方が本当に効果的だとつくづく考えさせられます。