自衛隊記

【入隊動機】雲仙普賢岳噴火に伴う自衛隊の災害派遣活動状況

自衛隊に入隊したきっかけ

筆者は高校卒業と同時に自衛隊に入隊しました。それは自衛官による雲仙普賢岳の災害派遣活動状況をテレビで目の当たりにしたことにより、「自分も世の中に役に立ちたい!」という気持ちが芽生えました。
それから20数年間、自衛隊で様々な災害派遣を経験しました。また、現地で指揮もしました。辛くて淡々と任務を遂行しなければならない状況ばかりでしたが、そんな時、入隊を決意した時の雲仙普賢岳の火砕流に立ち向かう当時の自衛官の勇敢な姿を思い出し心の励みとしてきました。

雲仙普賢岳噴火に伴う火砕流発生

ゴゴゴゴゴ、テレビから流れる火砕流のリアルタイムの映像で衝撃を受けました。
僕がちょうど、高校3年生になり、クラスにも慣れ始めた平成3年6月3日でした。
以前から報道されていた雲仙普賢岳の火山活動が活発化し、ついに火砕流が発生し甚大な被害が想定されるという報道内容でした。

実際、この火砕流では、「定点」と呼ばれる、火砕流を正面至近に捉えられる撮影ポイントに多くのマスコミ関係者が集まっていたところを火砕流の直撃を受け、合計43名が亡くなるという大惨事になりました。 また、その他にも家屋焼失・倒壊179棟もの被害が出て、ついに長崎県が自衛隊に救援出動要請をしました。いわゆる、都道府県知事の要請による災害派遣です。

テレビ画面からの映像ですが、山と山の間から見える火砕流は恐ろしい生き物のようにみえました。

時速100km、火砕流内の温度が100度~800度という高温の中、進む先を飲み込みながら恐ろしい音とともにテレビ画面を通して映る様は怪物か妖怪を見るかのように恐怖した記憶があります。

長崎県知事による自衛隊災害派遣要請

そして、この火砕流発生後、18時10分長崎県知事から自衛隊に対し災害派遣要請が発令されました。
それに伴い、第16普通科連隊基幹の部隊が現地に急行し雲仙普賢岳噴火災害派遣が開始されました。

被災区域の中での任務を安全に遂行するには、噴火状況の把握が不可欠です。

自衛隊は必ず偵察という事をします。状況把握です。そこで、偵察隊を繰り出し、2 か所に監視所を設営するとともに、24時間体制で観測し、地震計が捉える震動流波形から火砕流の発生を即時把握、その振幅と継続時間から規模を推定しました。

また、監視所では目視や暗視カメラあるいはレーダーを駆使してその流下方向とその先端位置を特定し、これらを刻々と無線発信する態勢を、即日構築しました。

その結果、安全性が確保されました。

この活動内容は、自衛隊の災害派遣機能を高めるとともに、同時に、警備を担当していた県・市・町の災害対策本部や警察、消防機関も、自衛隊のリアルタイム情報を傍受することによって、それぞれの防災機能を高めることが出来ました。

さらには、危険地帯で治山・砂防工事をしていた林野庁や建設省の工事現場でも傍受され、1 分間で危険性を判断し、3 分間で避難する態勢が取られるなど、安全確保に寄与しました。これにより、火砕流による甚大な被害を避ける事ができました。

このような監視態勢は、土石流についても機能しています。こちらは流下速度が遅いため、数分間の余裕がありました。

自衛官たちの活躍

このように自衛隊の火山監視は、地域の安全確保に不可欠なものとなってしまったことから、長崎県の災害派遣要請の目的は、「人命救助」に「それにかかる情報収集・警戒」を追加することになりました。

また、自衛隊のヘリコプターが、連日、溶岩ドームの成長状況や火砕流の流下状況を空中から把握することにより、火砕流の発生や土石流の発生状況をさらに詳しく把握出来ました。

さらには、危険で過酷な山頂部での観測点の設営や電源確保のためのバッテリー交換にも自衛隊が活躍しました。

その結果、自治体の避難勧告地域や警戒区域の拡大・縮小、あるいは警察災害警備隊や林野庁、建設省の工事現場の安全確保などをスムーズに計画・実行できたわけです。

自衛隊の戦闘力が災害派遣活動という行動を顕著に具現化することができたわけです。

縦割り行政が歴然とする中で、自衛隊がそれぞれの防災機関に協力することによって、それぞれの機関の本来の機能を格段に向上させることができたわけです。

そのような活動を一部始終テレビ等を通じて知ることができた時に、筆者は自衛隊の入隊を決意していました。

自衛隊の主な活動

派遣部隊

・第4師団 第16普通科連隊(大村)
・第4通信大隊(福岡)
・第4施設大隊(大村)
・第4戦車大隊(玖珠)
・第4偵察隊(福岡)
・第4飛行隊(目達原)
・第7高射特科群(竹松)
・西部方面ヘリコプター隊(目達原)

派遣期間

平成3年6月3日~平成7年12月16日(1658日間)

派遣場所

島原市、深江町(現 南島原市)、布津町(現 南島原市)

活動内容

1.行方不明者の捜索・収容
2.火山活動の警戒・監視
3.空中観測支援
4.住民避難支援
5.土石流氾濫防止のための応急工事
6.ライフラインの応急復旧

活動実績 延べ派遣人員

約210,000人
延べ車両 約 70,000両
延べ航空機 約 6,000機

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