自衛隊記

指揮の要訣!射撃教育のコツ!

射撃は天性もありますが、
練習すれば相当の程度までは誰でも進歩するというのが僕の信条です。

射撃教育の要点

射撃は姿勢が基礎です。
一見珍妙な姿勢でも、本人に適したら弾は当たります。

僕が、新兵を教える教育隊の教官に赴任した際に、
射撃術を教える助教たちに、様々な姿勢を取らせて射撃を実施させました。

するとどんな姿勢をしても当たる人は当たるのです。
つまり、初心者に対しては、本人に適した姿勢を施すことから始めないと

強制的にマニュアル通りの姿勢を取らせると返って当たらないのです。
逆に本人に適したら弾は当たります。

何故当たらぬかを間違いなく診断して、よく命中するように有効な指導をしてやるという事が幹部の責任です。ここが大切な部分なのです。

命中不良の原因で、最も多いのは、知らず知らずに犯す過失です。
これを発見し、その原因を正してやることが、部隊における射撃成果を大きく左右する事になります。

そしてこの努力が射撃教育のコツであると僕は考えます。

基本射撃の要領

据銃すると共に呼吸を止め、照準線を目標に導き、引き金の第一段を圧します。
(ここの動作はほとんど同時に行わなければなりません。)

引き続き躊躇なく引き金を圧しつつ照準線が照準点に達する瞬間の刹那、
極く微弱な力で第二段を圧します。

まだ落ちそうと思わないのに落ちることもありますが、その場合の命中は通常悪くありません。(この間5秒~6秒以内)発射後、しばらくその姿勢を保ち、予告(フォロースルー)を行います。

左手は銃と掌との間に隙のないように柔らかく、単に銃を支える架台となる程度にして力を入れないようにします。
指は軽く曲げる程度で力を入れてはいけません。

また、イメージとしては骨で支えるという意識で銃の重みを、手首で止めるのではなく、
肘から地面へ力が流れるように支えます。

呼吸は自然に止めた程度で結構です。中には「十分吸って2分吐け」などと、色々と教える人もいますが、
僕も色々試しましたが、結局のところ自然に止めたほうが一番良いという結論に至りました。

据銃すれば照準が殆どできているというのが理想ですが、それは上級者の話で、
実際には、照準線を照準点に導く動作が必要となります。

人によっては向上法とかいって、照準線を照準点の下方から漸次上方に指向しつつ、
照準点に達する瞬前に撃発する人もいますが、それもまた一理あると考えます。

照準の時に注意したいのは、頭を最も楽で自然の状態で目標を正視するに好都合のように保つことです。

頭を前に傾けて覗き込むと、照準誤差ができたり、遊底の油や水滴が目に入ったりするので目を閉じ着弾がずれたりします。
理想としては頭を真下に下して銃と頬をくっつけるイメージで頬付けを行ってください。

肩付けは前述の要件が充たす程度に確実に行います。床尾板が肩からどの程度に出るかは、
以上のことと体格とによって決まってきます。

床尾板と肩との密着程度は普通に反動を少し感ずる程度で良いです。
過度に強く圧すると、他の動作が固くなりますし、弱すぎると反動を強く感じて、
その都度肩から銃がズレて姿勢の崩れに繋がります。

据銃から発射までは5秒~6秒以内がベターです。
上手くなると狙った瞬間に発射することができるので、3秒~4秒以内発射する事が出来ます。

ちなみに、据銃から6秒を過ぎて発射すると間違いなく当たりません。
なぜなら、実戦では標的は動いているからです。

発射後の動作は技術が十分付けば不必要になりますが、訓練としては必要不可欠な部分となります。
命中不良の原因発見もできますし、射手に自覚を促す機会にもなるので、僕は基本教育として結構重視しました。

予告(フォロースルー)は発射後の照準線及び弾着の位置を報告するものです。
(発射後の銃口の動いた方向を報告するものではありません。)

この励行は技術向上に有効でありますが、射手がただ口癖に右・左というのでは意味がありません。
どんなに感じた場合どこに当たるかを考えさせせ、だんだん自覚するように指導する必要があります。

悪癖発見並びに矯正法

射場における教育者の位置は教範には通常、後方と謳っています。
それで大体のことはわかりますが、細かい部分は位置を変えて見る必要があります。

例えば銃口の動き方によって指導するには真後ろから、
引き金の引き方は左側から、目を閉じないかは右前方からというように、
指導箇所により、立ち位置を変える必要があります。

過失を発見して矯正するには、冷静沈着気長に熱心に、しかも、小言を禁じ、
穏やかな言葉で指導し決して成果を急いではなりません。また、急がしてもなりません。

銃口の動きによる指導

射手の後方近く、銃口と目標との線上に立ち、発射時の銃口の動きを注視します。

発射後に真上に上がり、そのまま真下に下がれば理想の銃口の動きです。

発射後に斜め右上に又は右真横に動くのであれば、多くは左手の指に力が入り過ぎています。見た目には指の爪が白くなっていますのですぐに発見しやすいです。

初心者には多く見受けられる現象です。このような射手は存外多く、矯正すると技術は向上します。
射手の左側に出ないと分かりずらいのですが、慣れれば後方からでも見つける事が出来ます。

次に、銃口が左真横に動く現象です。
これは委縮という現象です。撃発の瞬間に、音や反動を怖がり、撃発の瞬間に右肩を前に出したり瞬間に力を入れたりする現象です。

熟練射手でも、集中力が途切れて命中が悪くなった場合に肩着けがいつもよりお留守になり、稀に起こる現象です。
矯正の為には、片付けを適度にし、途中で力を入れないように心がければ良いのですが、心理的原因が多い現象ですので、
肩と銃の間に厚い布を当てて反動を緩和するのも効果的です。
また、時として初めから肩を前方に出させておくのも効果的です。

次に、銃口が左上に動く現象です。これは多くの悪癖が重なりあった場合に多くみられる現象です。
例えば、左掌と銃との間に隙間があって、肩を前に突出しする者、
左手首に力が入り過ぎて発射の時、後方に滑る者、
頬付けがガチガチで且つ肩を前に出す者等々です。

これらは一つずつ矯正していけばすぐに改善されます。

弾着による指導

毎回の射撃で必ず弾着を確認し、修正する事は射撃向上において極めて重要な事項です。
当日の射撃動作を見なくても矯正資料になるので、確実に保管しなければなりません。

弾着による判定は、照準が正しいものとしての大前提でありますが、弾着による分析が不能であれば、
まず間違いなく照準を点検すると改善されます。

弾着が左下(銃口が左下に動くのと同じ)の場合は、肩の前突出しによります。
弾着が左の場合は、左手の指に力が入り銃を左に圧している場合に多いです。
弾着が左上(銃口が左上に動くのと同じ)の場合は、左の指に力が入り過ぎている場合に多いです。
弾着が真上の場合は、頬付けが緩いか、両肘の間が狭すぎる場合が多いです。

頬付けが緩い者については、予告(フォロースルー)を確実にさせると改善されます。

弾着が右下の場合は、左手の指に力が入り過ぎている者です。また、両肘の感覚が広いものに散見されます。
弾着が二分する場合は、射撃途中で、頬付けや肩着けを外すものに多く見られます。
弾着が一定しない場合は、銃の故障か、照準不良でない場合を除いて、多くは目を閉じて撃発している者に多く見受けられます。稀に小さな呼吸で撃発する者に散見されます。

目を閉じる者は多くは爆音になれないのですから、空砲射撃で慣れさせるよ良いでしょう。
小さく呼吸者に対しては指導者も呼吸を止めて、射手の上半身のどこかに注視しておけば分かります。
矯正は自覚させれば容易に治ります。

弾着と予告(フォロースルー)

弾着が予告といつも違い、主として正反対のものはガク引きをしているかもしれません。
弾着に拘わらず予告が一定しておる者は口癖の場合が多いでしょう。

弾着と予告の関係を見ていると、おのずから射手の過失が見えてくることが多いです。
ガク引き矯正法は第二段の圧し方を正しく理解させることになります。

照準線が照準点に達する瞬前に引き金が落ちる事を理想としますが、照準点に達しなかったり、行き過ぎたりするであろうし、照準点付近でグルグルしていることもありますが差支えはありません。

その間に極く微弱な力で引き金が落ちればそれで問題はありません。
始めは照準点から離れる範囲が大きいのですが、それは気にしなくても大丈夫です。

段々小さくなって上手になるのです。理想として照準線が照準点に至る瞬間に撃発し得るごとくと述べましたが、
それは目で見て、心で良しと思い、指が照準に悪影響を及ぼさないように撃発するには、僅少しながら、時間がかかることになるからでありますし、実際の経験でも照準点に達する瞬間が一番良いのです。

原因が例えば肩の突き出しのように単純ならば発見が容易なのですが、様々に併発すると相殺したり増大したりして、
一つ一つ矯正することが大切です。

まとめ

射撃で一番難しいのは撃発です。
その教育法も難しく、これが出来たら射撃の最終コツを得たものと信じています。

最後に、僕が新兵の頃に撃発の心持ちを教える歌として
引き金は心で引くな手で引くな、寒夜に霜の降るが如くに」という有名な一首がありました。
僕は霜の降るのが分からないように、それほど微弱な力で引き金を落とせという意味に解しました。

所詮引き金は意識して落とすものに相違ありません。しかし段々上達しコツが分かれば、
次は有利な瞬間目標でも狙撃できるようにならねばなりません。

その為には以上の基本的な要領の時間を漸次に短縮し、引き金も意識して後期に落とさねばならなくなります。

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