自衛隊記

自衛隊で学んだ真髄!「指揮の要訣」

指揮の要訣は、指揮下部隊を確実に掌握し、

明確な企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し、

もって指揮下部隊をしてその任務達成に邁進させるにある。

この際、指揮下部隊に対する統制を必要最小限にし、

自主裁量の余地を与えることに留意しなければならない。

指揮下部隊の掌握を確実にするため、

良好な統御、確実な現況の把握および実行の監督は、特に重要である。

自衛隊ではこの指揮の要訣をしっかりと実践できる人材を常に育成しています。

簡単に説明しますと

組織や部隊を手足のごとく自在に動かすためには?

という事を説明しています。

指揮の要訣をわかりやすい様に分解すると以下の通りになります。

目的の明示
明確な目標の設定
適時・適切な命令・指示
必要最小限の統制(権限移譲)
良好な統御(統御とは心から従わせる。)
確実な現況の把握(管理)
実行の監督(部下の仕事の確認)

という感じになります。

ひとつづつ解説しますと・・・・

指揮の要訣「目的の明示」とは

読んで字のごとく、目的を相手に示す事なのですが、
その際、気を付けなければならないのは相手が理解したかどうかです。

誰が何の為に実施するのか」「なぜ実施しなければならないのか」など、

命令・指示を与えようとしている人に対してしっかりと目的を理解させなければなりません。

自衛隊は大前提として、戦場という命のかかった極限状態での行動です。
指揮官だけではなく、各個人末端まで、自分のやるべきことを明確に理解しなければ、
組織全体の目的に沿った行動が確実に遂行できなくなります。

現場でよく聞く「俺、聞いてねえよ~」「私、聞いてないしっ!」
などの、上からの指示だけを待つスタイルでは、まともに攻撃を受けてしまいます。
また、個々がバラバラで全体の統率が取れなくなり、
組織が弱体化し目的を達成できなくなってしまいます。

お前の行動する根拠はこうだ!」と口に出して伝える事が大事です。
それは1度だけじゃなく何度も耳タコのように繰り返し繰り返し、
相手の無意識レベルまで染み込むように口に出して伝えることが大事です。

私が現役だった時に意識してたことは、目的を明示したあとは、必ず質問をしていました。
相手に仕事内容を伝えた後、重要なポイントについて、
「この仕事の目的は何だっけ?」などと
答えれないも者については、最低3回は繰り返して伝えるようにしていました。

指揮の要訣「明確な目標設定」とは

誰が」「何を」「いつまでに」を必ず伝えてあげることです。

具体的には時間と完成度をしっかりと示すことにより明確な目標をスムーズに伝えることができます。
目的を理解させた後は、ゴールを具体的に教え、相手がイメージできるレベルまで示す事が大事です。

私が現役の頃に気をつけていたのは、
誰が
何を(どの程度)
いつまでに
と個人に責任を持たせ、時間や期日で明確に区切って指示を与えていました。

また、専門用語や難しい言葉はなるべく使用せず、
例え話を使いながら、相手の能力や理解度に応じて、
しっかりと咀嚼することを心がけていました。

戦場の霧というように、例え訓練でも、先の行動は予測不能です。
自衛隊の訓練は神出鬼没の敵を想定しているのです。
なので、限られた情報の中から判断して行動しなければなりません。

そんな極限状態でも高いモチベーションと集中力、判断力を維持し、最大限の能力として引き出してチームの機能を果たさせるのが、自衛隊の指揮官の仕事です。

そのため、指揮官は任務をしっかりと咀嚼し、ゴールをわかりやすくに示すが大事です。
一人一人が何をいつまでに仕上げるのかを理解できれば、無駄な動きを省くことができ、
混乱状態でも、やるべき事がわかってれば、おのずとそれぞれ考えて行動するわけです。
方向性を示して一人一人が目指すべきゴールをイメージさせてあげることが重要です。

時間が要すれば、中長期的なゴールも示してあげます。
中期的なゴールと短期的なゴール、そして個人の達成すべきゴールを周知徹底できれば、
あとは現場の個人に一任し、現場判断に任せる自主最良の余地(後述します。)を与えてあげます。
この考え方は、それぞれに創造性を発揮させ、任務達成への道筋を考えて行動するようになります。

指揮の要訣「適時・適切な命令指示」とは

意味を履き違えると「細かい上司」になって部下との意思疎通が遮断してしまいます。

作業内容や任務内容は、「目的の明示」や「明確な目標設定」で伝えれば十分です。
後は、個人の創造性に任せます。
なので、今、行っていることを細かく指示したりダメ出ししたりするのではなく、

次やることは「何?」「優先順位はコレだ!」などの直近未来を示してあげる事です。

さらに、自衛官という特性上、戦場という大前提を常に頭に入れなければなりません。
なぜなら、戦場という所は、常に刻々と変化するフィールドです。

目の前の状況に対し個人々々が柔軟な対応を取らなけらば、組織全体の目的がかなうような事にはなりません。

細かい指示を出すのではなく、難しくいうと「次の任務」と「制約条件」の2つを、
作戦実行に関わる個人に浸透させることが大事です。

任務は、組織における目標(ゴール)であり、制約条件は行動プロセスにおける諸条件(優先順位)です。

指揮官たる者、何をすべきでなぜそれをやろうとしているのか、今やるべき事は何か?次にやるべき事は何か?を明示することのみを徹底して行い、行動としてどうするかは個人に考えさせるようにします。

その為には命令・指示を出す側も幅広い見識を持っていないと細かいダメ出し上司になります。
自分がイメージしていた7割できていれば御の字と認めてあげることも大事です。
そして、すぐに次のゴールを示してあげます。

細かい指示を出しすぎると部下は育たないし、指揮命令系統に隔壁ができてしまいます。

指揮の要訣「必要最小限の統制(権限移譲)」とは

前述しましたが、現場判断に任せる自主最良の余地などの自由を確保することはとても大事です。
その組織やチーム、個人に創造性と生産性(成果の達成)が高まります。

最大のポイントは、現場へ大胆な権限を移譲することです。
そしてリーダーが示す目標(ゴール)・ビジョンなどは、簡潔にまとめることです。
ゴールの期日も明示することが大事です。
そうなれば、「俺聞いてないし!」「私聞いてないもん。」
などの指示待ち連中もいなくなります。

負のスパイラルにハマった指揮官は、俺の部下は指示を待つばかりで動かない、だからあらゆることを常に細々指示しなければならないんだ!
と決めつけず、見方を変えてみましょう。

細部まで詰めるパワーマネジメントではなく、部下を信じる認める褒めることで自主性を引き出すしなやかなマネジメントの実践に努めるのです。
それが必要最小限の統制です。

私が現役の時に実践していたことは、部下に対して目標を与えます。
そして「いつまでに」「どの程度」を重点において、
与えた仕事が「いつまでに」「どの程度」と照らし合わせて出来たのか?出来なかったのか?

出来なかった場合、処置・対策はどのようにしたら良いのか?
そんな風に考えて行動していました。
重要にしていたのは期限でした、

指揮の要訣「良好な統御(統御とは心から従わせる。)」とは

人間的な魅力で部下を従わせる事を心がけることです。

性格が良いという事でもなければ、とにかく結果を出せば良いというわけでもありません。
プロセスを大事にしその上で結果も出し続けるそんな上司です。

良いかどうかはわかりませんが、私が実践していた事は、
チームとして達成すべき目標と、今日1日の任務・目標を話し合い明確化することに努めました。

また、詳細な判断や方法といった実行にかかるプロセスは部下に任せるというマネジメント手法を取りました。

最初のうちは勇気が必要で、部下に対して多少なりとも疑心暗鬼にかられましたが、
一歩踏み出し、実行しているうちに部下を信頼でき、良い結果を生み出し続けるチームへと育ちました。

人間は一人では何もできません。大いに人の力を借りなければなりません。
組織を生き物です。生き物なので、常に世話し続けなければなりません。
「信頼」「一任」「責任をとる」などの食事を与えて、
生き生きとさせる必要があります。

良好な統御とは部下の創造性と生産性(成果の達成)を尊重し絶えずコミュニケーションを取り組織のベクトルが1点を向くように仕向ける事だと考えます。

指揮の要訣「確実な現況の把握(管理)」とは

任務の進捗状況をいかに把握するかです。
僕は常に時系列に基づき現在の状況をホワイトボードなので見える化していました。
つまり、任務からチームの行動予定を考えると思いますが、その行動予定を時系列に表として作成し、それをホワイトボードに記します。
判断するポイントは「予定通りか否か」だけを考えていればいいのです。

それに伴い、人の管理と物の管理もホワイトボードなどに記して見える化をしていました。
これにより、ゴールまで間にあるのか間に合わないかの判断ができます。
人に聞くより、誰もが見える環境を作って誰もが判断できる状況を作ります。

状況の変化に伴い、状況判断をしなければなりません。任務達成に影響を及ぼすのであればチームや組織の次の予定行動の変更を「決断」しなければなりません。
判断基準としては自衛隊でよく使用されていた「MET-T」(めっとてぃー)を使って考えていました。

つまり、任務(Mission)・敵(Enemy)・部隊(Troops)・地形と天候(Terrain and Weather)・利用可能な時間(Time available)予定と変化する時に状況判断し決断・計画の見直しを常にしていました。

PDCAサイクルと違い、目の前の変化する状況に従い、常にグルグル回さなければなりません。

戦場では常に状況は変化するので、計画も1つの計画だけでは部隊も指揮官の考えも行動もとん挫します。
なので、私が実践していた事は、計画を「プラン1」「プラン2」「プラン3」などの腹案をもって行動していました。

指揮の要訣「実行の監督(部下の仕事の確認)」とは

命じた事は部下からの報告によって確認し、重要なポイントは自分の目でしっかりと確認することが重要です。

これは、部下からの報告だけで判断すると間違った決断をしてしまうからです。
部下の判断と、自分の判断とでは格差があります。
それは人対人ならば間違いない事実です。
なので、重要な部分は必ず自分の目で判断することが大事です。
しなしながら、全て自分の目で確認する行為を取ると、部下は「俺って信用されていないのか?」などと上司と部下の間で確執生まれる原因となります。

なので僕は、重要な部分は自分で確かめることを部下に示した上で行動していました。
人が集まる組織は、感情も視野に入れなければならないので本当に大変です。

指揮の要訣のまとめ

「指揮の要訣」とはリーダーシップではなくコマンドです。
「俺に続け~」も重要ですが、コマンド(指揮官)として部下と物をしっかりと掌握しておくことです。

そのうえで状況を把握し、部下に対して明確な目標を示すことが必要です。

ひとりひとりの能力や価値観を尊重し、個々人が柔軟に選択して動ける環境の整備が必要です。
そして「なんのためにやるのか?」「そしてその目標はなんなのか?
モチベーションとゴールを示す事が大事です。

幹部時代に様々なことで壁にぶち当たりましたが、そんなとき佐々淳行さんの「平時の指揮官、有事の指揮官」
をバイブルに困難を乗り越えてきました。

その中でも力の源になった言葉を紹介します。
・部下の名前を言えるか?話をシて家庭環境を伺え。人間学を持つべし。
・率先してやれ、任務が与えられたら敬礼して直ちに取りかかれ。
・部下の報告に待ちの姿勢でいるな。
・清潔感を保て。外見は重んじよ。
・オズオズするな。
・大声が必要だ。
・信賞必罰を誤るな。

僕が運用訓練幹部の時、気をつけていた事があります。訓練編成を作成する時など、
人数と器材数だけの数字訓練計画を立案せず、

人数ならばその人たち全員の顔を思い浮かべると同時に、その隊員たち一人一人の能力・正確、家族構成含めて、細部まで考えながら計画を立案していました。
器材も同じで、それぞれの特徴、故障しやすい箇所、クセなどを考慮し訓練計画を立案していました。

これは恒常業務における勤務作成にしても同じ事がいえます。

細部まで考慮することにより、それぞれの問題点が見えてきます。
問題点が見えてきたら、それを是正しなければ細部まで考えている意味がありません。

できるだけ、問題点と向き合い対処することにより、組織に血が通い、組織が生き物と同じような動きをします。

つまり世話をすればするほど活性化し、信頼関係の構築が高まります。
そうやって手塩に育てた組織という名の生き物を指揮官に献上していました。

ただ、自分が指揮官になった時に、これを副長や運幹に無理強いするとそれはそれで、不具合が生じます。
良いと思うことを無理やり実践させてもうまくはいきません。

また、連合艦隊司令長官、山本五十六元帥の言葉を紹介します。
山本司令長官の実践してきた指揮の要訣です。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

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