自衛隊記

現代の戦争!スクランブル発進!自衛隊の防空任務とは?

こんにちは。元自衛官のタマちゃんです。
当ブログは投資のブログですが、日本国民として安全保障を少しでも知ってもらいたく
自衛隊で経験した知識を支障のない範囲で発信しています。

僕は元陸上自衛官で、防空任務を主体として日々任務に邁進してきました。
その中で、航空自衛隊、海上自衛隊と連携し防空任務に携わっていました。

そんな防空任務で強く感じたことがあります。
それは、現代における戦争は第2次世界大戦のように大量火力(武器)を駆使して相手を制圧するハードな戦闘よりも、どちらかといえば武器・火力の直接使用というより、自国の軍事能力や精強さをアピールし、相手の戦う意思を破砕することに大きな意義があると感じました。

それにより、大きな戦争を回避するという目的で日々任務を全うしています。
そういった意味では現在の自衛隊が実施している空の守りは、現代版の戦争といえます。

僕が自衛官時代に、空の守りをしていた「スクランブル発進任務のパイロット」の方から聞いた話を紹介したいと思います。この空の戦いで、自衛隊がいかにロシアや中国からの攻撃に対して防空していたかを具体的な内容で紹介したいと思います。

※ちなみに、スクランブル発進命令は、年間に1000回近く発生します。

自衛隊!空の戦争「スクランブル発進」とは?

空の守りといえば「スクランブル発進」です。言葉の直接持つ意味としては「緊急発進」という意味です。

自衛隊的にいうと、日本の防空識別圏内に敵機または国籍不明機が侵入した場合に迎撃戦闘機が最短時間で離陸する行動を意味します。

その為、航空自衛隊では日本国の防空識別圏を全国28か所のレーダーサイト早期警戒機空中警戒管制機により24時間体制で監視しています。

そして、そんな監視体制の下、日本の防空識別圏にアプローチしてくる敵機または国籍不明機が確認されると・・・

各航空基地で待機しているパイロットに対してサイレンの音が鳴ります。
パイロットは、スクランブルの指令と共に部屋を飛び出しコックピットへ。

この時の制限時間は約5分内という短い時間で離陸しなければなりません。

現代の戦争!スクランブル任務に就く日本の戦闘機

そんなスクランブル発進の任務についている、戦闘機を紹介します。

F-15


世界有数の戦闘能力を持つ名戦闘機
現在、全国8個の飛行隊と、その他飛行教導隊などに、約200機が配備されています。
すでに30年以上経過した機体ですが、基本設計の優秀さとレーダーをはじめとした電子機器、搭載装備の近代化が進められ、現在でも能力的に最も均衡のとれた、信頼性のおけるトップクラスの実力を持つ戦闘機といえます。
多くのパイロッットはこのF-15はドッグファイト最強と言っていました。

F-2


日米の先進の技術を結集して生まれた
米国のF-16を、日本の運用の考え方や地理的な特性に合わせ、日米の優れた技術を結集し日米共同で改造開発した戦闘機です。
F-16からの主な改造点は、旋回性能の向上のため主翼面積を増やし、軽量化のため先進材料や先進構造を取り入れたことですが、その改良した技術を米国に持っていかれましたね・・・

F-4EJ(改)


防空能力の向上・近代化を担って進化した戦闘機
米空軍のF-4Eを改造した戦闘機で、日本での運用には不必要な装備を取り除き、データ・リンクを載せて要撃戦闘機タイプにしたものです。

イメージとしては以下の図の通りです。


自衛隊!空の戦争!スクランブル発進のタイミングは?

スクランブルは、敵機または国籍不明機が日本の防空識別圏に進入する姿勢(アプローチ)を見せた時点で行われることが多いです。

多くの国において領空は、領海12海里の上空に設定されています。
他国機が領海上空の領空を侵犯してから領土上空に到達するまで、旅客機でも1分強、超音速軍用機であれば数十秒あれば可能です。
領空侵犯を確認してから対応するのでは手遅れになる危険があるのは明白です。

なので、領空外周の空域に防空識別圏を設定し、届けのない航空機が防空識別圏に進入した時点で戦闘機を向かわせて警告を行うということです。


タイミングとしては5分以内に日本の領空に進入してこない時間と距離の圏(基準BZD)でスクランブルがかかります。

パイロットに聞くと、最近では先にレーダー部隊から情報を得て準備をするらしいです。
防空司令部からのコックピットスタンバイ指示の前の心の準備みたいなものですかね。

パイロット曰く、「まあスクランブルアラートは大きな音で、意外と心臓に悪いのでレーダーからのモニターで、そろそろだなあっていうのを分かるようにしています」との事でした。

スクランブル発進!武装や領空侵犯された場合の対応措置は?

日本の場合、スクランブル機は「目視による確認」を義務付けられています。
そのため、長射程のレーダー誘導対空ミサイルは搭載しておりません。

武装はガン(機関砲)短距離赤外線誘導ミサイルのみになります。

基本的にスクランブル発進はペア(2機)で行います。(戦闘機は常に最低2機のペアで行動します)スクランブル目標が1機以上の場合にはもう1ペア(以上)がスクランブル発進に参加します。

必ず領空侵犯機よりも迎撃側の数が上回るように発進させます。
航空優位性を保つことがランチェスターの理論に基づいた基本的な戦術です。

まずは、国際的に決められた緊急無線で警告しながら、左右の翼を上下に振り「我に従え」というサインを送ります。
これに対し、国籍不明機が無視した場合は、信号弾などで警告射撃を行います。

自衛隊は専守防衛上、自衛隊法で対処できるのは、ここまでです。
つまり攻撃を受けないと、反撃できません。
相手よりも火力が大きな武器で対処すると宣戦布告になりかねません。

現代の戦争!自衛隊が行う実効的な抑止及び対処

このように、自衛隊は空の防空に適時・適切に対応し、国民の生命・財産と領土・領海・領空を確実に守り抜くために、総合的な防衛体制を構築し、大きな戦争へ発展する抑止に努めています。

周辺海空域における安全確保

ちなみの日本は、6,800あまりの島々で構成され、世界第6位の面積となる領海(内水を含む。)及び排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)を有するなど広大な海域に囲まれています。

自衛隊は、平素から領海・領空とその周辺の海空域において情報収集及び警戒監視を行っています。僕も何度か監視任務についたことがあります。

警戒監視を行う陸自隊員

また、海上自衛隊も、平素から哨戒機などにより、北海道周辺や日本海、東シナ海などを航行する船舶などの状況について24時間態勢での警戒監視をそれぞれ実施しています。

また、主要な海峡では、陸自の沿岸監視隊や海自の警備所などが同じく24時間態勢で警戒監視を行っています。

さらに、必要に応じ、護衛艦・航空機などを柔軟に運用し、日本周辺における各種事態に即応できる態勢を維持しています。

このような警戒監視により得られた情報については、海上保安庁を含む関係省庁にも共有し、連携の強化も図って日々防衛力と抑止力に努めています。
これも現代版の戦争といえることでしょう。

スクランブル発進!中国とロシア機への対応が激増

防衛省統合幕僚監部は、平成21年に航空自衛隊戦闘機が中国機に緊急発進(スクランブル)した回数が299回だったと発表しました。
平成15年の158回から比べるとほぼ倍増しています。

そしてそれ以降急激に増えています。


中国の主張としては
「日本側は釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題で絶えず挑発行動を取り、エスカレートさせている。
これが現在の釣魚島情勢の持続的緊張をもたらしている根本的原因だ」(外交部の華春瑩報道官)
とのことです。

さらに回数は増加し、平成29(2017)年度の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は904回で、前年度と比べて264回減少しましたが、1958(昭和33)年に対領空侵犯措置を開始して以来6番目となる回数で、依然として高い水準で推移しています。

このうち、中国機に対する緊急発進回数は500回で、過去最多となった前年度に比べて351回減少しているものの、対象国・地域別の緊急発進回数の公表を開始した平成13(2001)年度以降3番目に高い水準であることから、中国機の活動は引き続き活発であると言えます。

また、特異な事例として、2017(平成29)年5月には、尖閣諸島付近の日本の領海に侵入した中国公船の上空において、小型無人機らしき物体1機が、日本の領空を飛行する領空侵犯事案が生起しました。

同年8月には、中国軍の爆撃機6機が東シナ海から沖縄本島・宮古島間を通過し、太平洋を北東に飛行して、紀伊半島沖まで往復するという飛行が初めて確認されました。

さらに同年12月には、戦闘機2機を含む計5機の航空機が対馬海峡上空を通過して、日本海に進出してきました。
なお、中国軍の戦闘機による日本海進出が確認されたのは、本件が初めてでした。
また、2018(平成30)年4月には、中国の無人機(推定)が東シナ海を飛行する事案が生起しました。

もう何でもありの状態になってきましたね。この状態から見て、中国の航空戦力はその活動範囲を一層拡大するなど、日本周辺空域における行動を一方的にエスカレートさせており、強く懸念される状況となってきています。

また、ロシア機に対する緊急発進回数は、前年度と比べて89回の増加となる390回でありました。
2017(平成29)年8月及び翌2018(平成30)年2月には、爆撃機2機が日本周辺を長距離飛行するなどの特異な飛行を行いました。
ロシア機の活動も活発なまま推移しています。

なお、2013(平成25)年11月の、中国による「東シナ海防空識別区」設定後も、防衛省・自衛隊は、当該区域を含む東シナ海において、従前どおりの警戒監視などを実施しています。

防衛省・自衛隊としては、引き続き、日本周辺海空域における警戒監視に万全を期すとともに、国際法及び自衛隊法に従い、厳正な対領空侵犯措置を実施しています。

ロシア機・中国機機、なぜ飛んでくる? 急増する空自スクランブルは過去最高ペース

そもそも中国機やロシア機は、何を目的に日本の防空識別圏へ進入してくるのでしょうか?理由はいくつか考えられます。(決してヒマな訳ではありませんよ!)

まず第一に政治的な目的です。
2016年6月、東シナ海において中国軍戦闘機(恐らくSu-30MK2(フランカー)とみられる)が防空識別圏へ進入し、航空自衛隊のF-15Jと格闘戦へ入りかねない状態になったことが報道されました。
Su-30MK2(フランカー)

また2012年には中国国家海洋局の小型機Y-12が、尖閣諸島付近で領空侵犯する事件も発生しています。これらは日本に対する圧力を狙ったものだといえます。
Y-12

 

ただ戦闘機や小型機に対してスクランブルすることは、実はあまり多くなく、爆撃機か情報収集機がその大多数を占めます。

爆撃機は訓練目的の場合が多く、先の11月25日における太平洋上でのH-6Kの飛行も、射程2500kmのK/AKD-20らしき巡航ミサイルを搭載しており、グァムを標的にした訓練を実施したのではないかと僕は推測します。
またK/AKD-20を搭載している姿をあえて航空自衛隊に見せることで、対米圧力を狙った政治的理由も兼ねていることが考えられます。
H-6K
K/AKD-20
※この巡行ミサイルは現代戦における驚異的な武器です。
低コストで大量生産が可能で、しかも迎撃されにくい兵器です。

ちなみに、この巡行ミサイル(CM)だけで、戦闘が成り立つほど重要かつ強力な武器となります。地上から約50mの高さで飛行し、レーダー網をかいくぐり(基本はレーダーに映りにくいです。)プログラム誘導で標的へピンポイント攻撃します。なので、現代の戦い方は、特殊部隊が敵指揮官の位置や対空レーダーの位置を把握し、そこの座標をCMにプログラミングし攻撃を行います。戦車、野砲、歩兵での戦い方はもう古いのです。

情報収集機の目的は、有事のための備えです。
現代戦は「電波の戦い」であり、対空レーダーや通信ネットワークなどを活用し、同時に相手の電波を妨害する必要があります。

なので、情報収集機は、あえて航空自衛隊機をスクランブルさせることで自衛隊側にレーダーや通信を使用させ、その電波を受信、解析する「信号諜報(シギント)」を行っているのです。
Tu-154MやY-8CBは電波を逆探知するアンテナを多数搭載していることから、機体各部にアンテナをカバーする「こぶ」が多数あります。
Tu-154M
Y-8CB
これらの航空機は、普通に日本の空港を利用します。その際、日本の電波を思い存分収集してきます。
なので、僕たちはこれらの航空機が飛来してきた時は、一切の電波を封止していました。

ロシア機・中国機の接近!そのほとんどが合法行為?

こうした中国機やロシア機の飛行は、日本の主権が及ぶ領域である「領空」への侵入さえ行わなければすべて合法です。

防空識別圏の境界とは、領空侵犯を未然に防ぐために独自に設定された、国際法上なんの法的根拠もない単なる「線」にすぎません。

したがって、たとえ防空識別圏の内側といえど、公海上空はどの国の主権も及ばない領域ですから、他国機の飛行を妨げることはできません。

また逆に、自衛隊もYS-11EB、EP-3などの情報収集機を保有しており、他国へ接近する信号諜報を実施しているとみられます。
YS-11EB
EP-3

実際、過去には北朝鮮によって「日本の情報収集機が領空を0.001mmでも侵犯した場合は撃墜する」というふざけた声明が出されたことがありました。

近年のスクランブル発進の急増は、中国の著しい軍拡や、かつて低迷していたロシア軍の復興によって、東アジア情勢が緊迫化しつつある証といえます。今後もスクランブル発進の回数は高い水準を維持し続けると推測されます。

戦闘機の飛行時間は有限であり、無制限に飛ばすことはできません。その限られた中で訓練のための飛行時間も確保しなくてはならず、航空自衛隊、ひいては日本の防衛にとって、当分は厳しい状況が続くことになると推測できます。

現代版の戦争!スクランブル発進まとめ

2015年の米ナショナル・インスタレス誌によれば、日本の空軍力は中国に次いで世界5位ということです。

航空自衛隊は2018年で、戦闘機389機、偵察機13機、輸送機36機、空中給油輸送機6機、早期警戒機13機、早期警戒管制機4機、輸送ヘリコプター15機、特別輸送機2機を保有しています。

数としてはさほど多くありませんが、しかし、殆どが米国から調達したハイテクタイプです。

また、最新鋭F-35戦闘機(1機約160億円)は、42機導入(1機墜落しましたが・・)しており、主力戦闘機へと変わりつつあります。
しかもレーダーに映りにくいステルス機能が特長で、米や英など9カ国で開発しているシロモノです。

中国には戦闘機が約2600あるとされますが、その多くはロシアから譲り受けたミグ19、ミグ21という古いタイプの改良型で、ある専門家は、日本の最新型戦闘機1機に5機で襲撃にきても3分でやっつけてしまくらいの差がある、とのことです。

では戦闘機を操縦するパイロットはどうなのか? 実は、航空自衛隊のパイロットの腕前は世界一とも言われています。

航空自衛隊のパイロットは高度の訓練を受けています。さらに米空軍の演習に定期的に参加し、実践経験を有した米国のエリートパイロット(トップガン)と対空戦闘の演習した際、日本が命中率96%を叩き出しました。

(ちなみに、僕は某基地の米軍航空機相手に全機撃墜しました(演習ですが))
米国は「この国はリアルな戦争を放棄しているのに、なぜこのハイレベルなのか」と驚愕しているそうです。

また、ロシア空軍には「日本の戦闘機1機に対し2機で挑め」という言葉もあるそうです。
また、ご存知の通り、年間に1000回近く発生するスクランブル発進に対して、全て5分以内で離陸し、適切に対処している姿は、中国、ロシアから見ると脅威でたまらないと思います。

現場のパイロットから言わせると、「こんな奴ら(自衛隊)をまともに相手しても勝つ気がしねぇよ!」
と言わせるほどです。

つまり、相手に対して、ここまで発言させると目的は達成なのです。
戦わずして勝つことが現代戦の戦争であり究極の目的なのです。

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