自衛隊記

指揮の要訣!陸上自衛隊幹部自衛官が求められる【現場指揮能力】

これは僕が陸上自衛官の現職時、現場で経験したことや幹部教育で学んだことなどを
その当時のメモにして残していた事をアウトプットしてみました。

単なるメモ程度なので、箇条書き程度ですが、
これから幹部を目指す方々や現職若手幹部のお役に立てれば幸いと思い
記事をアップしてみます。

指揮の要訣!指揮官が意思決定の指針を考え方

①敵の意図、能力、反応時間を常に考えなければなりません。常に敵を意識することから始まります。

②不完全な情報しかなくても、素早く決定しなければなりません。なので、できるだけ低いレベルまで、意思決定の権限を委ねた方がいいです。
そうする事によりミスも少なくなり、ミスが少なくなると信頼も高くなっていきます。
信頼とは目で見ることができます。戦う技術や技能の良し悪しが信頼です

③完全な解決にこだわって、決定を遅らせるより、70%の出来具合で決定する勇気を持たなければなりせん。孫子の言葉を借りるなら「兵は拙速を貴ぶ」です。
なので、不確実性の軽減にこだわらず、不確実性を常と思って直観的に意思決定をした方がスムーズにいきます。

④できるだけ早く、受容可能なリスクを決め、納得のいく行動をとる必要があります。
その為には、指揮官は、様々なリスクを比較勘案し、有利な機会を生かすと共に、不確実性が伴う状況下で行動する能力を身に着けなければなりません。
逆を言えば「あらゆる決定にリスクが伴う」と認識しなければなりません。

⑤指揮官だけが、受容できるリスクを腹決めしないと不測事態に対応できないと心得ておくべきです。

指揮の要訣!直観的意思決定の励行

「言葉の定義」
直観的意思決定:得られた情報や観察だけで、直観的に状況を推定し「一つの案を考え、決定する」
分析的意思決定:時間をかけて情報を集め、状況をじっくりと分析し「複数の案を考え、そのうち最も良いと思う案を選択する」

幹部教育では「分析的意思決定」を徹底して教育します。しかしながら実際の現場では、上記の「直感的意思決定」の方が圧倒的に有利に働きます。

①報告が重要な事項を欠くことや誤っている場合なんてザラです。常と思った方が良いです。この問題には、できるだけ多くの情報源にあたって対応するしかありません。

②司令部からの情報も誤っていることがあります。鵜呑みにするのは危険です。なぜならそれに基づく行動の結果に対する責任は、指揮官にあります。また、司令部の情報の通り行動しないのも指揮官の責任にあります。

③様々な情報に疑問をもち続けなければなりません。ただ、その情報の解釈に反する解釈を、確固たる根拠なく切り捨てるのは危険です。

④バクチ的な行動として、部隊を救うために、他に方法やチャンスがない場合は、正当化されることもあります。

⑤理屈よりも、希望をもとにして、バクチ的な行動を決定すべきです。

指揮の要訣!任務指揮の励行

「言葉の定義」
任務指揮:任務を与えるが、いかに任務を達成するかは部下にまかせる。
詳細指揮:任務を達成するための行動や手段方法を具体的に指示する。

幹部教育ではもちろん「任務指揮」を教育していますが、往々にして現場では「詳細指揮」が行われているのが現実です。
まあ、言うまでもなくあるゆる状況が瞬時に変わりつつある現場では、「任務指揮」の方が圧倒的に有利な訳です。

①予期せぬチャンスや脅威に対応するには、部下が自発的に行動することが必要です。詳細指揮では単なる指示待ちの部下しか育ちません。指揮官は性善説を考えるより性悪説を考えたほうが良いです。

②部下の主導性を発揮させる方が、整然と行動させるより、よい結果を生むことが多いです。恐怖や細かい指示で整然とさせるより、指揮官はなるべく「アホなふり」して、部下の主導性を促す方が部隊としては活き活きする部隊を創造しやすいのです。

③現場では以下の3つが常です。なので分権的な考えや行動は必須です。
⇒現場は常に状況が急速に変化します。
⇒現場では、指揮系統や情報の流れが分断されることが当たり前です。
⇒現場では判断力、創造力、主導性を必要とする流動的な作戦で成り立っています。

④与えられた任務の達成が、目的の達成に貢献しないことが明らかになり、任務を命じた指揮官と連絡ができない場合や、その余裕がない場合、部下は、独断で、任務を変えなければなりません。この考えは自衛隊には普及されていませんが、実戦では必ず求められる能力です。なので、指揮官は、古参の隊員には必ず教育しなければなりません。

⑤「共通の認識」や「認識の統一」は同じ情報を共有する事でもなければ同じ解決策を得ることでもありません。指揮官が考えなければならないのは、どんな成果を得るか?という事です。

指揮の要訣!指揮と統制の原則

①指揮官は人間の忍耐力の限界を認識しなければなりません。なので、常日頃から自分自身でその限界を体感する必要があります。
大げさですが、僕の場合「訓練で幻覚を見る事」「普段の日常業務で血尿を出すこと」を基準にしてました。
実際に幻覚も見ましたし血尿も出しました。

僕は、これくらいやれば人間の限界なのか!っていう基準ができたので、
東日本大震災での災害派遣活動では人の回し(勤務的な運用)で隊員からの不満や愚痴など全く耳に入ってきませんでした。

②部下に、忍耐力の限界を超す努力をさせることをためらってはいけません。血尿までは酷かもしれませんが、一度くらい幻覚をみさせてあげれば良いです。ただし、その後、必ず休ませることを忘れないようにしてください。

③指揮の要訣を僕なりの言葉であらわしたのが下記の5つです。

部下の努力を統一することに心血をそそげ!

分権的権限を与え実行せよ!部下を信じ、失敗したら己が責任を取れ!

部下との信頼を深めるために、部下と話す時は家族の事まで思い浮かべよ!

部下との相互理解を深めよ!なるべく多くの対面会話を実施し、部下の目をのぞき込み、その声の調子に聞き入いり、心情把握を常に行え!

タイムリ−に、かつ効果的に決定し、行動せよ!

「言葉の定義」
手続的統制:命令・規則・教義・戦術・技法・手順書などで部隊を統制する。
積極的統制:積極的に評価・決定・指揮することで部隊を統制する。

①積極的統制やりすぎの弊害
⇒指揮官に部下からの情報や情報要求が集まりすぎ、指揮官が疲労困憊してしまします。
⇒なぜなら部下は、どういった方法をとるかまで指揮官に聞くようになってきます、
任務指揮のはずが、どんどん詳細指揮になっていきます。

②統制の指針
⇒部下に、最大限の決定及び行動の自由を与える勇気を持ってください。もちろん責任は指揮官自らで!
※ちなみに僕は、こういった類の口だけ番長に痛い目にあわされました。
責任は俺が取るといいながら、いざ責任の追及の場面になった時に全責任を負わされました。

指揮官たるや責任を取る勇気や度量がないなら、自ら指揮官を辞退した方が良いです。

⇒COP(コモンオペレーショナル・ピクチャ)を作り、適宜修正し、部下に配布し頭ぞろえをして下さい。(下図参照)

⇒必ず、共通の図、用語を使う事を心がけてください。これについては幹部教育やどこの部隊でも徹底されているかと思います。(実践しやすいので)
⇒部下に柔軟性と適応性を提供してください。その為には常に、口頭で問答集を行うと良いです。「この場合貴官ならどうする?」とかその際、重要な事として答えは一つではないという事を認識させてあげる事が大切です。

指揮の要訣!不在指揮の励行

①訓練において、指揮官不在という状況を作成して、より多くの不在指揮官の経験を積んであげる事は重要です。その効果として、部下が自ら現実的な行動方針を見つけ、非現実的な行動を捨てるための判断を養う事ができます。

②計算されたリスクと、破滅(ハザード)につながるギャンブル的な行動を身をもって識別できます。

③任務を追及する不屈の決意(リザルブ)と、実りのない行動方針を追求する頑迷さ(オブステナシー)を識別できます。

④困難(ハードシップ)と挫折(セットバック)を識別できます。

指揮の要訣!戦いの原則

戦いの原則は常に頭に入れておいてください。
指揮官の行動はこの戦いの原則をフィルタリングとして行動の判断基準にしてください。

以下は教範とは違う僕の言葉と順番で表します。(過去の経験からアレンジ)

目 標:あらゆる行動を、明確で決定的な目標(オブジェクト)に指向せよ。
集 中:緊要な時期と場所に戦闘力(火力・機動力・防護力)を集中せよ。
㋒攻勢(主導):主導性(イニシャチブ)を維持し、保持し、さらにこれを拡大せよ
機 動:戦闘力の柔軟な運用により、敵を窮地に陥れよ。
奇 襲:敵を、その準備していない時期、場所及び方法で打撃せよ。
指揮の統一:責任ある単一指揮官の下に努力を統一せよ。
簡 明:完全に理解できる、明瞭で簡潔な計画と命令を準備せよ。
節用(経済):非重点正面には、必要最低限の戦闘力(火力・機動力・防護力)を割当てよ。
警 戒:決して敵に予期せぬ利益を与えてはならない。

指揮の要訣!作戦計画の意義と条件

①優れた計画は、WHAT(任務)とWHY(目的)を部下に示し、どのようにするかは部下にゆだねられると意識しなければなりません。

②任務遂行のさいの潜在的危険要素を摘出し、それぞれの要素の発生確率と損害を考慮して、リスク評価を行わなければなりません。それに伴い、リスクの低減案を考え、リスクの受容度を決めなければなりません。

③集団的浅慮を生む要素の摘出及び排除
⇒習慣:受け入れられている方法の変更へのためらい。
⇒おそれ:古いものを捨てることや、新しい提案をして愚か者とみなされる不安。
⇒偏見:合理的根拠を欠いた、もしくは知識不足による思い込み。

④集団的浅慮の回避策
⇒メンバーに異論や疑念を呈することを奨励する又はその場を提供
⇒問題提起者は、潜在する解決策について、自分の選好を表明させないようにします。
⇒問題解決に関わる2つの独立したグループを作り両方の意見を求めるようにします。また、グループ外の人間からも意見を求めなkればばなりません。。
⇒意思決定の過程を批判的に検証するため、少なくとも一人以上に反対者の役割を与えるようにします。
⇒㋔合意が得られた後、皆で、それまでに考えられた解決策を、もう一度検討させます。

指揮の要訣!作戦計画の作成

①戦術的思考過程を必ず考慮するように下記のような雛形を作成

上級司令部よりの任務受領
任務の分析
ISR(諜報、監視、偵察)&上級司令部等への情報要求
味方と敵の可能行動をいくつか列挙
上記の行動の可能性や優劣を比較する(図上演習など)
最良の行動方針の選択
作戦計画の作成

AOC(幹部上級過程)で徹底した訓練をしているので忘れないと思いますが、忘れる指揮官もいるんですよね。僕の場合、防水処置した小さなメモを用意して常に胸ポケットに入れて1日1回以上は見て音読していました。

②行動方針の評価要素

㋐ 適 合 性(シュータビリティ):任務に適合し、仮定は妥当か。
㋑ 実行可能性(フィジビリティ):利用可能な資源で、任務を達成できるか。
㋒ 受容可能性(アクセプタビリティ):想定される人的・物的・時間的コストが成果に見合い、法的・軍事的・政治的に受容可能か。

③批判的思考は自己規制的判断のことであり、必要不可欠なスキルです。意思決定の中核であると認識しなければなりません。
これにつきましては、「批判的」とは、あらをさがすことではなく、問題について徹底的に深く思考することです。
それは、思いついた最初の答に満足せず、いくつかの観点から問題を見ることが重要です。

④時間は、計画作成の決定的に重要な要素です。常に時間軸との闘いです。

⑤用心深さによる誤りより、スピード、大胆さ、勢いによる誤りの方がマシ

⑥時間を犠牲にして敵についての知識を深めても、リスクが低減すると限らないので時間の無駄と考えたほうがベターです。

⑦計画作成に時間をかけるほど、より整合的な計画になります。しかし、部下指揮官の計画作成や準備の時間が減り、敵に準備と行動の時間をより多く与えることになるという事を理解したうえで、計画作成が自己満足にならないように気を付けなければなりません。

なので、効果的な計画作成とは、配下の部隊が計画し、命令を下すのに必要にして十分な時間を与えることです。

⑨指揮官は、計画作成のために使える時間の1/3を自分のために使用し、残りの2/3を配下の部隊に割り当てることに心がけてください。

⑩戦術的思考の時間配分:任務の分析 30%、行動方針の列挙 20%、行動方針の分析・比較・決定 30%、命令の作成 20%がベストかな。

⑪状況不明な場合、敵の情報収集に時間をかけるよりも・・・
⇒警戒範囲・規模や警戒部隊の数を増強する。
⇒敵との最初の戦闘に、最小限の規模の部隊投入をすることに気を付ける。

⑫戦術的思考の開始にあたって、指揮官は、任務達成のため必要とされる情報の欠落を予期しなければなりません。

指揮の要訣!作戦計画の作成(後半部分)

①しばしば、不完全な、相対立する、あいまいな情報をもとに、状況を評価し決定をする努力をしてください。

作戦計画は、単純(シンプル)でなければなりませんが、複雑さを無視し、単純化しすぎ(シンプリスティック)てはいけません。

計画に合わせて状況を作為してはいけません。ミッドウェー海戦の作戦計画がそうだと言われています。

④ひとつの作戦(計画)を、いくつかの段階に分割し、各段階毎にプランニング・ホライズンと終結状況を設定する方法をとる計画を作成してください。これも部隊ではよくやっていると思うので問題はないと思います。

⑤今の作戦(計画)が終わったなら、ただちに、さらなる成果を追求するための次の作戦の計画も、あらかじめたてることを意識してください。

⑥作戦が思うように進展せず、修正では対応できない場合に備えて、それらの状況を想定した、いくつかの作戦の予備案も作ります。

作戦の計画作成から終結までのフローは必ず作成してください。(カッコ内は時間的余裕がある場合に実施)

「言葉の定義」
熟慮作戦:指揮官が、詳細な情報を把握し、複数の選択案をもつ詳細な計画を作成し、調整することができる作戦。
緊急作戦:指揮官が、各個命令を用い、計画作成と準備の時間を犠牲にして作戦の実行速度を優先し、利用可能な部隊を監督する作戦。

指揮の要訣!作戦の指揮・統制

①計画ではなく、敵と戦うという意識で計画を実行してください。敵と接触して、修正の必要のない計画はひとつもないと心得るべきです。

②緊急情報要求は、「敵が移動するかどうか」というようなあいまいな情報要求ではなく、「X地点に、敵の先頭部隊がいつ到着したか」といった、事実に関する情報要求でなければ意味がありません。

緊要情報要求は、10件以内にとどめよたほうが良いです。

④緊要情報要求の数が少なければ少ないほど、幕僚は、努力を集中して効率的に対策を考えることができる。

⑤OODAサイクル:任務の理解→O(オブザ−ブ:観察する)→O(オリエント:予想する)→D(ディサイド:決定する)→A(アクト:実行する)→O(オブザ−ブ:観察する)と常にグルグル回す必要があります。

⑥観察で明らかにすること
⇒現況は、望んだ終結状況と比較して、どうなっているか。
⇒ 計画と現況の差を埋めるために、計画の修正は必要か。

⑦指揮官の最も価値ある資質のひとつは、しかるべき時に、しかるべき場所に、自分を置く才能です。
なぜなら、実際の状況に関する情報を豊富に収集できるからです。
そのためには、

㋐指揮は前線に存在しなければならない。
㋑指揮官は部下を、部下は指揮官を見なければならない。
㋒指揮官は、前線で指揮をすることで、下位の指揮官や兵士の状況を直接評価できます。

⑧上級指揮官は、2階層下の指揮官の状況を、自分の目と耳で確かめると大概の事故は未然に防げます。

⑨作戦中のフェイス・ツー・フェイス・コミュニケーションは、時間の節約だけでなく、統率(リーディング)の面からも、文書によるコミュニケーションより重要です。

⑩フェイス・ツー・フェイス・コミュニケーションは最も効果的な意思疎通の方法です。

⑪特に上級指揮官は、指揮所の囚人になってはいけません。「現場に神宿る」の言葉を常に意識してくだし。これは僕の尊敬する番匠さんの言葉です。

この記事のご意見はこちらからどうぞ