ストキャスティクスはMACDやRSIと同じ、オシレーター系のテクニカル分析の一つです。
ご存知の通り、テクニカル分析の手法には、
相場のトレンド発生や転換を見極める「トレンド系」と、
買われ過ぎや売られ過ぎを判断する「オシレーター系」の2種類があります。
トレンド系のテクニカル分析は、トレンドが発生している時に機能を発揮し、
レンジ相場の際にはダマしが発生しやすいというデメリットがあります。
一方、オシレーター系はトレンド系の逆で、レンジ相場の時に機能を発揮し、
トレンドが発生している時には上限や下限に張り付いてしまい使えないというデメリットがあります。
逆に言えば、トレンド系とオシレーター系を2つ同時に使うと、
それぞれのデメリットを相殺しあい、どんな相場にも対応でき、
機動的にトレードを行うことが出来るのです。
今回は、オシレーター系のテクニカル分析の一つである、「ストキャスティクス」についてその見方とトレード手法について解説をしていきます。
また、ストキャスティクスは、デメリットをよく理解してから使用してください。
ストキャスティクスの仕組み
ストキャスティクスは、相場が「買われ過ぎ」か「売られ過ぎ」を判断する指標の一つです。
仕組みをざっくり簡単に説明しますと、
一定期間の高値と安値を活用して、
「買われ過ぎ」なのか「売られ過ぎ」なのかを判断します。
現状の価格が一定期間の高値及び安値と比較して、どの位置にあるかで算出されます。
基本的には、「ボックス相場」で最も効果を発揮し、逆張りシグナルとして利用します。
ストキャスティクスに似ているRSIは
「買いゾーン」、「売りゾーン」で判断するのに対して、
ストキャスティクスは2本の線を用いて明確に売買シグナルが出るので、相対的に判断がしやすいと個人的に思っています。
また、下記の図のとおり、ストキャスティクスには、それぞれ2本の線があります。
この線を「%K(パーセントK)」、「%D(パーセントD)」と呼びます。
基本となる「%K」と、%Kを平均した「%D」という動きの異なる2本の線を表示し、その位置や2本線の交わり方から売買タイミングを判断することになります。
また、以下の計算式で算出されます
%K
%K=((終値-期間中最安値)/(期間中の最高値-期間中の最安値))×100
この式の意味するところは当該期間において現状はその変動幅のどのあたりに位置しているのかを0~100の間で数値化しているということです。
つまり、この数値が大きいほど レンジの高値、小さいほどレンジの安値に位置していることを示します。
また、通常はこの期間を5とすることが多いようです。
%D
%D=(%K1+%K2+%K3+・・・+%Kn)/(n日間)
これは%Kをm日間で移動平均し、滑らかにしたもので、通常この移動平均期間は3を使います。
「%K」と「%D」の二本を使って描かれるものを
「ファスト・ストキャスティックス」と呼びますが、感応度が高すぎますので、通常は使用しません。
一般的に使用されるのは「スロー・ストキャスティックス」でよりスムージングです。
「スロー・ストキャスティックス」は「%D」と「SD(slowD)」の二本を利用します。
「SD」は「%D」のL日移動平均となり、通常この平均期間を3で利用します。
また、「SD」を移動平均した「SDスロー」と呼ばれるラインもあり、「SD」と「SDスロー」を利用するとより反応が滑らかとなりますが、売買シグナルが遅れるリスクが指摘されます。
ストキャスティクスの売買シグナルと使い方
ストキャスティクスの売買シグナルは、主に以下の3つがあります。
① %Dが100%に近づけば買われ過ぎ、0%に近づけば売られ過ぎを判断します。
② SDを%Dが下から上へ抜けた時が買い、逆に上から下に抜けた時が売りとなります。
③ 相場が新高値や新安値を付けたにもかかわらず、ストキャスティックスのほうは高値や安値の更新によってこれを確認できなかった場合、ストキャスティックスのダイバージェンス・パターン といいます。
同じオシレーター系のテクニカル分析手法であるRSIと似ていますね。
それでは一つひとつ解説していきます。
買われ過ぎ・売られ過ぎ
ストキャスティクスが100%に近づけば買われ過ぎ、0%に近づけば売られ過ぎと判断することができます。
通常は、%Dが80%以上で買われ過ぎ、20%以下で売られ過ぎという具体に判断します。
ただし、注意したいのは、
80%以上になったのを見て売りで、すぐにエントリーしたり、
20%以下になったのを見て買いでエントリーをしたりするという行為は避けたほうがいいです。
理由は、RSIなどの他のオシレーター系指標にも言えることですが、
相場に勢いがある時は、そのまま買われ過ぎや売られ過ぎの領域に指標が張り付いてしまうケースがあります。
なので、単に逆張りのシグナルとして活用すると大きな損失を被る危険性があります。
正しい使い方は、利益確定の判断基準にしたり、トレンドに一時的な調整が入るかもしれないと備えることが必要です。
また、%Dが80%以上の位置でダブルトップを形成した場合は売り、
20%以下の位置でダブルボトムを形成した場合は買いと判断できます。
%DとSDのクロス
%DとSDのクロスを持って売買シグナルとします。
下記チャートのように、%DがSD下から上へ抜ければ買いでエントリー、
上から下へ抜ければ売りでエントリーのポイントとなります。
ここで一つ注意点として、全てのテクニカル分析手法に言えることですが、100%成功する方法などありません。
どんなテクニカル分析手法でも、ダマシが必ず存在します。
%DとSDのクロスによる売買ポイントが発生しても、すぐに反応してエントリーするとほとんどがダマシの場合が多いです。
逆に言いますと、殆どがダマシなので、エントリーしてもうまく利益は出せません。
勝率アップの手法として、ストキャスティクスのみで使うのではなく、
他のフィルター(テクニカル分析手法)も使用して、エントリーポイントを絞っていくのがおすすめです。
ちなみに、このクロスの場所が「売られ過ぎ買われ過ぎの水準(20%以下と80%以上)」で発生した場合はより信頼性が高いサインといえます。
ダイバージェンス
ダイバージェンスを簡単に説明しますと、為替レートとオシレーターが逆行する現象のことです。
例えば、下図のチャートの通り、
① 為替レートが下落しているのに、ストキャスティクスの安値が上昇していれば、
それは下降トレンドの勢いが弱まり、そろそろトレンド転換を向けるシグナルとなります。
また、同様に、
② 為替レートが上昇しているのに、ストキャスティクスの高値が下降していれば、
上昇トレンドの勢いが弱まり、そろそろトレンド転換が近いことを示すシグナルとなります。
トレードの方法としては、ダイバージェンスを確認して利益確定の判断基準としますが、
MACDのダイバージェンス同様に相場の天底の出現を示唆する可能性が高いサインです。
なので、逆にトレンド転換をとらえて新規でエントリーを行うことも出来ます。
個人的にはトレンド転換として捉えたほうがオススメです。
利益幅がグンと上がります。
まとめ
ストキャスティックスは、逆張りのテクニカル分析という性質を持っています。
そのため、利益確定は素早く行う必要があります。
ストキャスティックスのサインを待ち過ぎると利益を確定するのに出遅れてしまうリスクがあります。
また、オシレーター系の指標に一般的に言えることですが、強いトレンドが形成されたときに、ストキャスティックスは上下に張り付いてしまい機能できなくなることがあります。
その意味でも、ストキャスティックスは、相場の細かな波に反応して短期売買を行いトレードに向いているテクニカル指標ということがいえます。
最後に、ストキャスティクスは、RSIやMACDとともに、人気のあるオシレーター系のテクニカル分析手法の一つです。
しかしながら、ストキャスティクス単体でトレードをすると、ダマシにエントリーする確率が高くなります。
なので、個人的にはボリンジャーバンドや移動平均線などのトレンド系のテクニカル分析と一緒に使用することをオススメします。
そのほうが、勝率を飛躍的にアップさせることができるので、ぜひマスターして、トレードの技術を向上させていきましょう。